「攻撃準備するです!!」
咄嗟にアキラが叫ぶ。
すると何処か別の場所に着いていた。
それが転移だと気付いたが、ブリキのような転移ではなく酔いなど一切なかったので、俺は逆に呆気に取られていた。
「うわっ」
「ホムラさん!!」
目の前に現れたコボルトが槍で襲って来たので、俺は尻餅をついた。
━ ━ ━ ━
コボルト。
ドーベル犬のような顔をした人型のモンスター。軽装備で防御力は低いが、動きが少し早い。
━ ━ ━ ━
アキラは杖を網のように使って、コボルトの足を掬い上げる。
そしてコボルトが後ろに倒れる直前に真上から杖を振り下ろし、コボルトの腹部を殴ると四散した。
「大丈夫ですか?」
「ああ」
アキラは俺に手を伸ばしたが流石に恥ずかしい所を見せてしまったので、俺は自力で起き上がる。
「これ。どういう事だ……。軽く30体を超えるだろ」
鞘から太刀を抜きながら、周囲を見渡せばモンスターの数が異常過ぎていた。
遠くにはボス部屋の門ような両扉が見えるので、その近くにモンスターが沢山湧くのは理解出来る。
でもこの数は今から始める初心者にしてみれば、厳し過ぎていた。
「ホムラさん。あの両扉がボス部屋です。なので、死なないで欲しいです」
「いや、死ぬって!!」
アキラはボス部屋を指差しながら俺を睨みつけるが、アキラの無謀な策に俺は逆にツッコミを入れた。
アキラは顔色見せずに杖を横に垂直持ちしながら、平然とモンスターの方へと歩いて行く。
「私は魔法使いです。なので、今回はサポートに周るので頑張るですよ」
「おい。俺の話を聞けよ」
それでもアキラはモンスターに近付いて行く。
何も恐れずに攻撃をしない彼女を見て、俺は自分自身に嫌気が差して、アキラを追いかけた。
「ああ、わかったよ。やってやろうじゃねーか」
◇ ◇ ◇
「まずはコイツから」
俺は走りながらゴブリンの集団を巻き込んで突進した。
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ゴブリン。
小鬼のモンスター。身長は低く、人間の子供くらい。主に棍棒を持っている。
━ ━ ━ ━
怯ませたゴブリンから順に太刀で2、3回、他のゴブリンは回避しつつ同じように斬りつけると四散した。
四散したゴブリンに気付いて、近くにいたコボルトが2体も近寄って来た。
(2体は流石に……)
するとそのコボルト達の頭上目掛けて雷が落とされた。
コボルトは麻痺状態になり、動けなくなる。
それを俺は太刀で斬って、2体同時に四散させた。
(アキラだ。あとで礼を言わないと……)
その場から離れ、俺は両扉を目指す。
「それにしても何だよ。こいつらは」
また四散に気付いて、他のモンスターが俺に近寄って来るのが見える。
出来る限り回避しようにも次から次へとこちらに気付き、モンスターは近寄って来る。
これではいつまでも経っても狙われる一方だ。
そんな時だった。
「ホムラさん。フリーの技は全然使えるので、それで一掃するですよ」
何とも遠くから聞こえた声の主。
アキラは既にあの両扉で待機していた。
「それを先に言えぇぇ」
遠くに見えるアキラにツッコミし、俺は後ろを振り向いて太刀を構える。
その数。ゴブリンとコボルト、新たに現れたリザードマンを入れて、ざっと20体。
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リザードマン。
大トカゲの人型モンスター。主に剣を持っており、コボルトよりも足が早い。
━ ━ ━ ━
(使えるなら、俺の魔王剣技で……)
「〝魔王剣技 焔神楽〟」
俺はモンスターよりも先に前に踏み込み、素早く回転斬りをした。
すると遅れて焔神楽の炎弾が放たれ、周囲にいたモンスターは全て絶滅し、弾けるように四散した。
周りを見渡せば、どうやら今の技で標的から外れたようだ。
(やっと終わったな……)
俺は一息吐いて、両扉へと歩き出す。
すると俺の戦闘を観戦していたアキラと一瞬目が合ったが、一方的に逸らされた。
(何だ……?)
少し気になったが俺が両扉に着くと、アキラは静かに両扉を開いた。
「行くですよ」
何故か素顔を見せずにアキラはそう言った。